タイのデータセンター・ブーム:7,460億バーツが承認され、送電網が追走する
タイBOIは2025年に7,460億バーツのデータセンター投資を承認。TikTokの8,420億バーツ計画が牽引し、パイプラインは2.87GWに到達。最大のリスクは送電網である。
タイは2025年を、東南アジアで最も急成長したデータセンター市場として締めくくった。投資委員会(BOI)が承認した総額1兆8,700億バーツのうち、7,460億バーツ(約220億ドル)がデータセンター投資であり、その筆頭がTikTokによる8,420億バーツ(約250億ドル)規模のマルチサイト計画である。パイプラインは現在2.87GWに達する。2026〜2028年の焦点は需要ではない。建設が進む場所へ、送電網がメガワットを届けられるかどうかである。
スコアカード
| プロジェクト/投資家 | コミットメント | 内容 |
|---|---|---|
| TikTok(ByteDance) | 8,420億バーツ(約250億ドル) | サーバー+データインフラ。バンコク、サムットプラーカーン、チャチュンサオ |
| 2025年上期 BOI合計 | 5,212億バーツ(161億ドル) | データセンター28件 |
| 2025年11月の承認分 | 1,000億バーツ(31億ドル) | 4件、IT負荷合計376MW |
| Skyline Data Center | 460億バーツ | 200MW、チャチュンサオ |
| GSA(Gulf+Singtel+AIS) | 135億バーツ | チョンブリ35MW、90MWへ拡張。液冷対応 |
| Microsoft | 10億ドル超(2026〜2028年) | タイ・リージョン周辺のクラウド+AI投資 |
| バンコク・クラウドリージョン | 5年間で約1.4兆バーツ(410億ドル)の経済価値を見込む |
出典:w.media、Developing Telecoms、Light Reading。
これに、2025年にチョンブリ・テックパークのハイパースケール・キャンパスを着工したDayOne(GDS Internationalのスピンオフ)と、AWSが継続中のリージョン整備を加えれば、クラスターの地図は明快である。接続性ならバンコク都市圏、規模なら東部経済回廊(EEC)のチョンブリ〜チャチュンサオ回廊。施設単位の詳細は東南アジアのデータセンター・カタログにまとめている。
なぜタイか、なぜ今か
三つの要因が重なった。
実効性のあるインセンティブ。 BOIは投資額の100%を上限に法人所得税を免除する。PUE、水利用効率、地域への裨益で判定される「高効率」施設は8年、それ以外は5年。加えて機械類の輸入関税免除と100%外資保有が認められる。改定された基準ではタイ人人材とサプライチェーンの育成計画も要件となった。免税年数と現地化を意図的に交換する設計である。
コスト水準。 Cushman & Wakefieldの地域別コストランキングで、タイはマレーシア(中央値960万ドル/MW)を下回り、シンガポールや日本を大きく下回る。従来型の建設で1MWあたりおよそ700万〜1,000万ドルだ。シンガポールの330〜475ドル/kW/月を3分の2下回るホールセール・コロケーション単価(価格指数を参照)と組み合わせれば、建てて貸す採算は成立する。
地域的な好機。 シンガポールは容量を配給制にし、マレーシアは2026年2月に非AIデータセンターの認可を約2年間制限した。これまで自動的にジョホールへ向かっていた資本が、いまはバンコクとEECを柔軟な代替地として値踏みしている。Maybankがタイを「次のデータセンター・フロンティア」と呼んだのは、まさにこの文脈においてである。
制約:2.87GWが旧世代の送電網にぶつかる
タイに発電の問題はない。予備率は潤沢である。あるのは送り届ける側の問題だ。RECCESSARYが記録しているように、2.87GWのパイプラインはEECのクラスターに集中しているが、その送電設備は従来型の工場を想定して設計されたもので、単一キャンパスで200MWという負荷を前提にしていない。結果として生じるのが「メガワット・ギャップ」である。系統に電力は存在するが、開発事業者が必要とする特定の変電所で、テナントが求める時間軸のうちには確保できない。
制度側の対応は始まっている。EGATは数十億バーツ規模の系統増強をデータセンター回廊に的を絞って表明し、規制当局は第三者による系統アクセスを伴う直接PPAの試行を進めている。単一買電者モデルからの構造的な転換であり、事業者が再生可能エネルギーを直接契約できるようになる。初期計画の骨格となるのは約2,000MWの試行枠だ。いずれも、見出しを飾る承認額よりもプロジェクトのバンカビリティに効く。
注視すべき点
- 承認から受電への転換。 BOIの承認は意思表示にすぎず、意味を持つ指標は年間に実際に受電したMW数である。2026〜27年の供給が紙上のパイプラインに追随するのか、それとも系統連系の待ち行列が静かに伸びるのかを見るべきだ。
- TikTokのフェーズ配分。 3県にまたがる8,420億バーツは分割して着地する。そのペースが市場全体の需給バランスの基調を決める。
- 電気料金の政治。 データセンターの負荷増と家庭用料金の衝突は、マレーシアですでに規制を生んだ。タイの直接PPA制度には消費者を遮断する狙いも含まれる。その最終的な姿は先行指標になる。
- 価格。 この規模の新規供給は通常、賃料を軟化させる。だがAI需要がそれを吸収すれば——他のどの市場でもそうであったように——バンコクのホールセール単価(現在は指数の主要市場ベンチマークを大きく下回る)には上方へ収斂する余地がある。系列は統計で追っている。
タイの2025年は発表の年だった。2026〜2028年は変電所の年になる。
よくある質問
タイが2025年に承認したデータセンター投資はどれくらいか?
タイ投資委員会(BOI)は2025年に総額1兆8,700億バーツのプロジェクトを承認し、そのうち7,460億バーツ(約220億ドル)がデータセンター投資の計画額である。2025年上期だけでデータセンター28件・5,212億バーツ(161億ドル)に達した。
タイにおけるTikTokのデータセンター投資はどの程度の規模か?
TikTokのBOI承認済み計画は8,420億バーツ(約250億ドル)規模で、単一の承認としては最大である。バンコク、サムットプラーカーン、チャチュンサオでのサーバー設置とデータインフラ拡張を対象とする。これを軸に、総額9,130億バーツの3件同時承認が行われた。
タイでデータセンターを建設しているのはどの企業か?
TikTok/ByteDance、AWS(数十億ドル規模のリージョン整備)、Google(バンコク・クラウドリージョン)、Microsoft(2026〜2028年に10億ドル超のクラウド/AI投資)、GSA(Gulf・Singtel・AISの合弁、チョンブリで35MW、90MWまで拡張)、DayOne/GDS(チョンブリ・テックパーク・キャンパス)、Skyline Data Center(460億バーツ、チャチュンサオで200MW)などである。
タイのデータセンター・ブームにとって最大のリスクは何か?
電力を届けられるかどうかである。プロジェクトのパイプラインは2.87GWに達したが、東部経済回廊(EEC)の送電設備は従来型の産業負荷を前提に建設された。発電される場所とデータセンターが集積する場所との間にギャップがあり、EGATは数十億バーツ規模の系統増強計画で対応している。
データセンターがタイを選ぶ理由は何か?
BOIのインセンティブ(投資額の100%を上限とする5〜8年の法人税免除)、1MWあたりおよそ700万〜1,000万ドルという建設コスト(マレーシアの中央値960万ドルを下回る)、造成済み工業団地で確保できる用地、そしてマレーシアが2026年2月に非AIデータセンターを制限したことで生まれたタイミングの窓である。
出典
- w.media: TikTok leads Thailand BOI approvals with US$25 billion
- Developing Telecoms: Thailand's BOI greenlights TikTok data centre project
- Light Reading: Thailand approves $3.1B data center investments
- RECCESSARY: Thailand's grid bottleneck — the megawatt gap behind a 2.87 GW boom
- Nation Thailand: EGAT to upgrade power grid for data-centre push
- Bangkok Post: Maybank dubs Thailand the next data centre frontier
- DCD: DayOne breaks ground on Chonburi Tech Park campus
- Tilleke & Gibbins: Thailand's updated data center incentive criteria
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